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ふたりオムニバス 001

by うらひと

外に連れ出すと呉服屋の箱入り娘が誘われたのは、ヴァイオリンケースを持った女性。

箱入り娘の方も、別にただ大人しいわけではなく、むしろ近所の男の子と混ざって遊ぶような性格だ。

それでも、遠出することなど、夢のまた夢だった。

数日後、ふたりは電車に揺られていた。

フリー切符を手にしたふたり。女性はボックスシートの向かい側で外を静かに眺めている。

時々、クラシック曲を口ずさみながら。

グルグルと、家のことと今の状況を考え直す。

これでよかったのかと、到底答えは得られないであろう女性の方をちらちらと伺いながら。

シートの通路側に、観光客だろうか、外国人が座るようだ。

海外慣れもしているらしく、女性は変わらぬ様子で英語で応じる。

そこで、見つめられていたことに気づいた女性がはにかむ。

ああもう、委ねてしまおう。箱入り娘は諦めた。

どうせ携帯電話など持たせて貰えなかったのだから、と。

特段、思い出話も昔話もなく、観光客に分けて貰った芋羊羹を少しかじる。

ほのかな甘みが、意識をこのあてのない旅路に溶け込ませた。

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